私とは何か
私とは何か 「個人」から「分人」へ
を読んだので感想を。
「個性」とは何だろうか。
著者は、人間というのは、唯一無二の「個人」でなく複数の「分人」から成っているとしている。
ある他者との間に生まれる私を「分人」という。
他者の数だけ「分人」がある。
また、「分人」とは、自分を複数の人格に分けたものである。
私の「個性」というのは、いろいろな私の中の「分人」が集合してできたものであり、流動的で複雑である。
例えて言えば、分人は分数のようなもの。
分母は自分の関係者の多さで変わる。
分子は相手との関係によって変わる。関係の深い相手との分人は大きく、関係の浅い相手との分人は小さい。
全ての分人を足すと1になる。
自分を変えるには、分人の構成比率を変えるしかない。つまり、つきあう人間を変えるということ。
分人を意図的に変え、自分に有益な環境にする。それこそがリスクヘッジになる。
分人は他者との相互作用の結果だから、ネガティヴな分人は、半分は相手のせい。
(ポジティヴもまた、相手のお陰。)
好きな分人があれば、その関係性を足場にして生きていけばいい。
また、愛するということも、分人の考えで言えば、「その人といるときの自分の分人が好き」という面もあると言える。
相手の存在があるだけで、私は私を好きになれる。これこそが愛だとしている。
以上が本の概要である。
読み終えて、この「分人」という考えはストンと腑に落ちた。
個性を持つよう、世間の常識のように言われてきた。特に自分は個性が無いと言われることが多かった。
では、個性を持つとは一体どうすればいいのかと悩んできた。
人生は他者との関わりの連鎖である。
自分が好きになれる分人を作るために、他者とコミュニケーションを取る。
自分一人で部屋にこもって考えて悩んでいたのでは、分人が固定され、個性は変わらない。
やはり、行動することに意味がある。
今まで個性という不確かなものに振り回されていたが、少し概要を掴んだような、そんな感じになれた本だった。